第一幕 黒衣の悪魔


その日、私たちは焔護さんに申し付けられて部屋のお掃除をしていました。
そこで水姫さんが棚の隙間に落ちていた写真を見つけました。


「あ、あの、水姫さん、これって…」
「んー?澪ちゃんなーにその写真?…あ!女の人が写ってるね」

私たちが写真を眺めていると、焔護さんがやってきました。

「こら、掃除してるんじゃないのか?遊んでるんじゃない」
「にゃははっ、面白いもの見つけたんだもんっ」
「写真が棚の隙間に落ちてました」

焔護さんが写真を受け取って、眺めました。

「ああ、この写真か」
「誰なんですかー?」
「ま、いろいろあってな…」

水姫さんをじっとみて、何かを思い出すように遠い目をしました。

「こいつはワシの命を狙って来た暗殺者だ」
「あんさつしゃー?」

水姫さんは素っ頓狂な声を出しました。私もビックリでした。
暗殺者って、つまり焔護さんを、殺害することを目的としているいうことです。

「こいつ面白い格好してるだろう?」

焔護さんに言われて、よく見てみると、看護婦さんのような衣装をされていました。
でも、黒色のような看護婦さんの服です。

「白衣の場合は<天使>だろ?」
「ふんふん」

水姫さんが腕を組んで焔護さんの話を聞いています。

「でも、これは黒衣だ。つまり、黒衣の<悪魔>ってわけなんだよ」
「なるほどーー!!って、駄洒落ですか!?」
「笑えるだろ!?もう、これに気づいた時笑えて笑えて!!!」

焔護さんは大爆笑していました。思い出し笑いでこんなに人は笑えるんだ、と思いました。
水姫さんはよく分からないようで、きょとんとしていました。

「それで、この人どうしたんですか?」

私が尋ねると、少しまじめな顔になりました。

「――死んだよ」
「え?」
「ワシが殺した」

その時の焔護さんの目はとても冷たい刃のようでした。