第二幕 その名は沙姫


「ね、ねえ焔護さん、いったいその人ってどんな人だったの?」

水姫さんが尋ねました。
焔護さんは少し水姫さんを見た後、目を閉じました。

「そうだな…あれはいつころだったか…、
 さっきも言ったとおりこいつはワシの命を狙ってこのゲートにやって来た」
「うん。」
「で、その時も暇だったんで、
 ゲートセキュリティをOFFにして中に入れてやった」
「ええ!?自分を狙っているような人をゲート内に入れちゃったの!?」
ただの暇つぶしだ

物凄く自信たっぷりの台詞でした。さすが焔護さんです。
いつも根拠の無い自信に満ち溢れています。そこは見習いたいです。

「おい、澪。お前なんか失礼なこと考えてなかったか?」
あ、あの、いえ、そんなことないです
「そうか、ならいい。それで、そこのホールに誘い込んだんだ」

ホール、というのは大体100m四方位の広い部屋です。何にも無い部屋です。
焔護さんに言わせると、無駄に広い、だそうです。

「そこで待ち受けた」



<焔護の回想>
■アクエリアスゲート・ホール■

「あははははは!!遅い!!!!」

焔護は高笑いしながら暗殺者の繰り出す剣技の数々を見事に
…そして異常な体勢で避けていた。
暗殺者は自分の体ほどもある剣を振り回し、焔護を攻撃していたが、
焔護を捕らえることが出来ない。


「―――くっ、何故…当たらない」

暗殺者は呟いた。今までこれらの技を以って標的を斃してきた。
だが今回の相手…焔護地聖には全く技が効かない。
避けられ、或いは受け止められ、弾かれる。

「お前の技はパワーばかりでスピードが伴っていないのさ」
「なんだとっ!?」

技をかわしながら焔護は言い放つ。
それが合ってるのかどうかは分からないが、確かに焔護は暗殺者の一撃一撃を
綺麗に…たまに物理法則を無視しながらかわしている。

「ついでにモーションが大きくて分かりやすいんだよ――――うりゃ!」
「くはっ!!」

焔護の拳をくらい暗殺者は壁際まで吹っ飛び、強烈に背中を打ちつける。
立ち上がろうとして、ひざが落ちた。

「な…なぜ…」
「ここは俺の領域だ。小手先の技では何とかなるものではない」
「―――くっ、訳の分からぬ…こ、ことをっ…!」
「お前、名前は?」
「・・・。」
「だんまりか?いーじゃないか、減るもんじゃないし、闘っている相手の名前くらい知りたい」


「・・・夕霧沙姫<ゆうぎり さき>」