第三幕 転換


「わあ、なんかボクと名前似てるねっ」
「それはそうだ。そこからお前の名前を考えたからな」

私の駄洒落と違うけど、それもなんだか適当っぽい名前の付け方だな、と思いました。
でも私は焔護さんにつけてもらった名前は大好きです。

「それにしても焔護さんって、強いんだ!相手は暗殺者だったんでしょ?」
「うむ。まあ奴もそれなりの力を持っていたがな。ワシにすれば児戯にも等しい」

焔護さんは当然、といった感じでおっしゃられました。さすがです。
理由はよく分かりませんが、凄いです。

「後で調べたらその筋では結構有名人らしくてな。<黒衣の悪魔>の異名も
 伊達じゃなかったようだ」

その筋、というのは暗殺者業界、ということでしょうか。

「へえ〜。それでその後どうなったの?」



<焔護の回想>
■アクエリアスゲート・ホール■

「ふーん、夕霧、か。それにしても変わった衣装してるな」
「・・・。」
「あ、どっかで見たと思ったらナース服か。それにしては紫…いや黒っぽいな。
 白衣じゃなくて、黒衣だな」
「う…くっ」

暗殺者―――夕霧は剣を支えに立ち上がった。そして、再び構える。

「なんだ?まだやるのか?」
「当たり前だ…!私はそのためにここにきた!お前を殺すまでは…私は倒れるわけにはいかぬ!」
「ふーん」
「それが私に課せられた至上命令!それが私のすべてだ!!」
「面倒くさい奴だな」
「黙れっ!!!―――唸れ!!白刃!!!!」
「獣じゃあるまいし」

夕霧の持つ両刃の剣がオーラに包まれる。

「ハイペリオンスラッシャークラメーションエクストラエクスペリエンスデッドオンタイム!!!!!」
「技名が長い!!!そして意味がよく分からん!!」

技の発動前に焔護が夕霧の腕を絡め取り、剣を弾き飛ばした。
剣が粉々に砕け散る。

「俺はなあ!!」

今度は焔護の纏うオーラが極端に増幅しあたりをつつむ。
焔護の必殺の一撃を警戒して一瞬、夕霧の動きが止まった。
その瞬間!!

シリアスストーリーは嫌いなんだよ!!!!!!
瞬間に夕霧の背後に回り、その豊満な胸を鷲掴みにした。
これはもはや痴漢行為であり、現実世界の皆は真似をしちゃだめだ。

「――なっ!?」

真っ赤な顔をして夕霧が焔護の手を払いのけた。
離れ際に焔護が指を鳴らすと黒衣ナース服の胸元が破れ、
美しい胸が露になった。

うむ、合格
何が合格かは分からないが、焔護は夕霧に言い放った。




「きゃああ〜!焔護さんの変態っ!」
「うるさいな。別にいいだろーが。ワシはシリアスは好きじゃないんだ」

またもや当然!といった感じで焔護さんが言い放ちました。
ちょっと非難するような目で水姫さんが焔護さんを見ていました。

「えっちだなあっ、焔護さんはっ!!」
「んだよ。こっちは命狙われてたんだぞ。それくらいしてもいいじゃないか」

何が「いいじゃないか」か分かりません。
でも、それ以上になんだか展開が分からなくなっちゃいました。
本当に焔護さんは夕霧さんを…殺したのでしょうか。




<焔護の回想>
■アクエリアスゲート・ホール■

「ふ、不埒な!!」

胸を両手で隠しながらわなわなと身を震わす夕霧。

「まだやるのか?…もう実力の差はわかってるだろーが」
「煩いっ!」
「武器もないだろう?」
「煩い煩いっ!!」
カルシウム不足か?怒りんぼだな…」

あ、そうだ!と焔護が手を打った。

飯でも食うか?俺、まだ食ってないんだ



「えー?なんでそうなるの?」
「いや、ワシが単純に腹が減ってただけなんだけだ」

やっぱり焔護さんはよく分からない人です。水姫さんも首を傾げていました。
でも、さっきまで命のやり取りをしていた人にご飯を勧めるなんて、
とっても…心が広いというか…えーと、なんていったら良いのでしょう?

「それからどうしたの?ご飯食べたの?」
「はじめは警戒してたけどな」

それはそうですよね。さっきまで命がけで闘っていた相手の作るものですから。
あ、でも焔護さんは命がけで闘っていたのかは疑問です。

「とりあえず、ワシと対等に戦えるくらいまでここに抑留した」
「ええっ?」