第四幕 共生の強制


<焔護の回想>
■アクエリアスゲート・ホール■

「という訳で、今のお前はぜんっぜん俺に歯が立たない訳だから、当分ここにいろ

何が「という訳で、」かは不明だが、食事後、焔護は夕霧に言い放った。
破れた胸元を隠しながら食事を取っていた夕霧は、
空いている手に持っていた箸をおとしそうになった。
ともかく、夕霧は焔護地聖をにらみつけた。

「――なんだと!?」
「別に帰ってもいいが、帰れるのか?お前はどこかの組織に属しているのだろう?」
「…なぜ、そう思う?」
「なんか、使命とか言ってたからだ。そう、考えるとお前は全然任務はたしてない」
「くっ…」
「まあ、今ここでは生殺与奪は俺にあるしな。俺の暇つぶしにちょうどいい」
「・・・。」
「その代わり、俺の命はいつ狙ってもいい。どうだ?」

夕霧は少し考えた後、頷いた。

「・・・いいだろう。・・・後悔する事になるぞ」
「そうなるといいな」

胸を片手で隠してふらふらと夕霧が立ち上がる。
焔護は夕霧の後ろにあるドアを指差した。何の飾り気も無いドアだ。

「その部屋が空いているから好きに使え。着るものはちゃんと用意してやる」




「あっ、その<着るもの>とかのあたりなんか…焔護さんの悪意を感じちゃうけど?」

水姫さんが焔護さんの顔を覗き込みました。悪戯っぽい表情です。
水姫さんが、「にへへ」と笑いました。

「ボクみたいに変わった衣装着させたんでしょ?」

腰に手を当てて、えっへん、といった感じで水姫さんがいいました。
私もそう思いました。でも、こんな怖そうな人がどんな服を着るのか、少し気になりました。

「まあ暇つぶしだ。ワシを楽しませて貰う為のな」
「今のボク達と同じってことだねっ。まあボクは楽しいけど」

私も今の生活は楽しいです。

「あいつは意外に純情でなあ。毎回違う服を着て面白い反応をしていた」



<焔護の回想>
■アクエリアスゲート・ホール■
―――翌日―――

「おいっ、貴様っ!!!!」

次の日、夕霧は焔護と合うと、いきなり怒鳴った。

「何だこの服はっ!!!何でこんなにサイズが小さいんだっ!


夕霧の着ていた服は辛うじてボタン二つ止められるくらいの小さい襟付きの服だった。
ついでに可愛らしい事に、赤いリボンで漆黒の髪を後ろで束ねている。

「よく似合ってるじゃないか」
「うぐぐ…っ」

顔を赤くして下を向く夕霧。
その夕霧の右腕に、見慣れない朱の文様があるのを焔護は見つけた。

[――ん?おい夕霧、その二の腕にある印はなんだ…?」
「お前には関係ないっ!!!」

夕霧は叫ぶとともに手刀を焔護に放つ。
だが焔護はその手刀を首をかしげるようにかわした。

「あまい。そんなに殺気立ってるとすぐに分かるぞ」
「くっ!!この服が悪いんだっ!!!」

捨て台詞を残して夕霧は自室へ逃げ帰った。ちょっと泣いてた。

「なんだ、もう諦めるのか…飯が出来たらよんでやる」
「よ、よけいなお世話だっ!!!!」