第五幕 遊戯開始


「なにそのほのぼのとしたようなそうでないような展開はっ?」

水姫さんが叫びました。
私も同感です。もう、何が何かわかりません。唯一分かるのは、
暗殺者の夕霧さんは焔護さんにいいように遊ばれている、ということです。

「なんだ?殺伐とした血だらけな雰囲気の物語を聞きたいのか?」
「うっ、ううん、そういうわけじゃないんだけどっ!!」


「あ、あの…本当に、焔護さんがその人を殺したのですか?」

私は思い切って焔護さんに訊いてみました。

「澪、ワシが嘘をついてると思うか?」
「…いえ、でも…」
「でも、焔護さんが夕霧さんを殺すなんて…思えないよっ。そんなに楽しそうなのに」

水姫さんが私の言葉をつないでくれました。



<焔護の回想>
■アクエリアスゲート・ホール■

次の日、夕霧が目覚めると、先日のように綺麗にたたまれた衣装が置いてあった。
…それ以外は着るものが何も無い。仕方なく袖を通して部屋をでる。

「起きたか」
・・・これは何の衣装だ?


「開口一番それか。それはブレザーだ」
「このスカート…足が…スースーするんだが…」

足をもじもじさせる夕霧。

「何を言っている。お前が来たときのナース服もどきもそれくらいの短さだっただろうが」
「あれは戦闘服だ!こんなチャラチャラしたものとは違うっ!」
「そんなものか?それはそれで足運びがスムーズに出来るだろう?」

言われて夕霧が演舞の真似事をする。確かに動きやすいし、上段蹴りも出しやすい。

「ただ一つ言っておくと、蹴りをやると…丸見えだぞ」
「――はっ!?」
「白、か」
「破廉恥なやつめ!!!」

襲い掛かる夕霧を軽くかわす。

「まだまだ甘い。本当の俺の<能力>を見せてやろう!!」

焔護の掌に収束された十重の魔方陣が形成される。
物理次元に干渉する方陣が瞬時に完成した。


「焔護さんの能力?」
あ、あの、管理者マジック…というものですか?
「管理者マジックは…まあ俗称だ。本当の能力は<次元支配>だ」

…よくわかりませんでした。


<焔護の回想>
■アクエリアスゲート・ホール■

衣壊掌!!!!

焔護の掌底が夕霧に放たれた。――だが、夕霧に衝撃はない。

「見せ掛けだけか―――…」
「ふっ…」

ちょっと焔護はニヒルに笑ってみた。

「な―――っ!?」

夕霧は驚愕した。夕霧の衣服のみが、分解していた。
衣服が虫食いの如く、くり抜かれるように原子分解していく。

「こ、これはっ―――!?」

そのまま下着姿になり…そして、その下着すら分解していった。


「ぁ…あ…!?」
「まだまだ、だな」
「ぉ、覚えていろおぉおお!!!!」

全裸の夕霧は泣いて自室へ走り去った。

「それは負け台詞だぞ」