第十一幕 Dimension interference start

■アクエリアスゲート応接室■

「悪いな、突然押しかけてしまったようだ」
「全くだ。何しに来たんだ?」

悪態をつきながらドカッとソファーに腰掛ける焔護。
ゆっくりと向かいのソファーに腰掛ける黒咲。優雅に足を組む。

「例の娘…その後どうなったかと思ってな」
「…ああ。ちょうど時の話をしていた所だ、さっきの二人にな」
「そういえば、…私も詳しくは聞いてなかったな」

ジロリと焔護を見る。無言で話をしろという圧力をかける黒咲。この人物はこういうのが得意らしい。
焔護はため息をつきながら、澪が用意した紅茶を口に含んだ。

「全くお前らはそんな事ばかり聞きたがるな…」


<焔護の回想>
■アクエリアスゲート・ホール■

「―――くあっ!!!」

もはや獣の如き速さで襲い掛かる夕霧に焔護は防戦一方だった。
防禦を貫いて衝撃が体を走る。

「いて…っ、俺の領域でここまでやれるとはな…!!スペシなんたら光線っ!!」

焔護の拳から発せられたレーザービームのような一撃が夕霧に炸裂する。
だが、さほどダメージを与えている様子は無い。夕霧に当たる直前に掻き消えている。

「あの赤いオーラのせいか!?」

右腕から発せられ、今や夕霧の全身を覆う赤いオーラ。
それが焔護の技を霧散させているようにみえた。

「ああもう!面倒なヤツだな!!直接打撃を与えないと駄目なのかっ」

接近戦に持ち込む焔護。
夕霧の蹴りを仰け反って避ける。ブリッジの要領で夕霧を蹴り上げた。
そのまま落ちてきたところを掌打でぶっ飛ばした。くるくる、と空中で回転し、着地する夕霧。
―――息が乱れる。



「…あれ?」

先ほどまで猛攻をかけていた夕霧の動きが止まっていた。全身が小刻みに震えている。
そして、涙を流していた。

「…ころ…し、て…、はや、く…

聞き取りにくい声で焔護に嘆願する夕霧。

「はやく!!!」

夕霧が叫んだ。

「…いまさら何言ってんだバカ者」

とは言ったものの、そんなこと言われたらなかなか決心が鈍ると言うものだ。
獲物を殺すより生け捕りにするほうが難しいと言うのに…、まったく。
と、考えながら―――不可視擬似鍵盤に入力を開始する。
    ID:********
     パスワード:*******
    ID/パスワード確認―――中央電脳に接続しました

「――――AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」
「うわ」

残された夕霧の理性が弾けた。