第十八幕 Magic to break

上空に飛び、落下の勢いをつけて焔護に襲い掛かる。
その襲撃を紙一重で避け、胸元を掴んで投げた。服が破れる。

「な…っ!!」

破れた胸元に<印>があった。

「フン、やはりな…。夕霧と同じ印か」
「きっ…さまっ!!破廉恥なっ!!!!うおおおおおおおおおおおっ!!!!」

拳を突き上げ、<氣>を集中する少女。

「燃え上がれ!我が力!!!はああぁぁああぁあああああ!!!」
「暑苦しい女だな」
「くらええええええ!!!今、必殺の!!超加速拳!!!!」

ゴオオオッ!!という轟音と共に恐ろしいスピードで駆ける少女。
加速拳というだけあって一気に焔護との間合いをつめ、右ストレートパンチを繰り出した。

「ちっ、暇な時なら服ひん剥いてやったが―――今は時間がないからさくっと終わらしてやろう」

少女の「超加速拳」をかわしながら焔護が呟く。
「超高速拳」の波動の余波が壁にクレーターを作った。結構な威力だ。
それを横目で見ながら術の詠唱に入る。

「月よ陰たる陰にして闇天照らす陽、日よ陽たる陽にして蒼天翳る陰――陰陽相成りて―――」

合掌の要領で手を合わせるが、少女の攻撃が激しく法印を形成するに至らない。
やむなく防禦に手を回す。

「ええいくそっ!」
「はあああああっ!!!!せぇい!やっ!はあっ!たああっ!!!」
「ああもう!」

術式を切り替え、圧縮高速言語で詠唱を再開する。

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!」」」

始めから高速言語を使わないのは精神力を消費するから、という理由だが、
本当は口が疲れるからだ。
「呪文の詠唱」は術者が術を形成しやすいようになる。
つまり、好き勝手に呪文を唱える。
余談ではあるが同じ呪文発動でも黄坂舞の場合は歌を熱唱する。

まあ、そんなこんなで合わせた手を離すと、赤紫色の呪術の塊が半透明球形に形成された。


「―――解呪法印!」

方術の塊を少女にある胸元の呪印に叩き込んだ。

「なーーーっ!?」
「…夕霧沙姫の事は任せておけ」
「・・・・っ!」

ドサッ、と倒れた少女の胸元から黒い煙が立ち上がり、
霧散し呪印が消えた。


「…これは―――。そうか、そういうことか。くそっ」

再び焔護は駆け出した。

「あいつら…大丈夫かな」



とまあそんな感じで奥へ向かい走る焔護を
色々な女戦士が襲い掛かる。それを片っ端から呪印を開放して走り抜ける。
「ああっ、鬱陶しい!」

とにかく走っていくと、荘厳な扉の前に着いた。思いっきり蹴破る。
そこに―――男が居た。