第十九幕 終焉ノ刻 「やはり―――岩山田岩男か」 傲岸不遜な態度で焔護を見る男――岩山田岩男。分かりやすく言うとラスボスだ。 部下(?)達には「閣下」とか「陛下」とか呼ばせている。 まあ、ちょっと精神的にイタい。 「やはり貴様か。…となると例の<次元開闢>の宝玉を盗んだのもお前だな、岩山田岩男」 「…貴様…何者だ?何故それを、何故俺様の名を知っている!?」 「―――そうか、俺が誰だかまだ分からんか。まあ、当然といったら当然だがな」 焔護の逆立つ髪型が徐々に変わり、髪の色も赤みを帯びた色から 青色に変わる。 「ま、まさか…!?」 「思い出したか、俺を…」 カチリと鍔を鳴らすと、焔護は元の姿に<戻った>。 「そうか、貴様がアクエリアスゲートを継ぎし者か!!くくくっ、奇運だな」 「――ふん。ま、このオレにちょっかいだしたこと…精々後悔しろ」 「貴様如きにやられる俺様ではない!」 「今度は逃がさん。――粉々にしてやる」 「あの時の俺様と思わない事だ!!!くあああいいああうあおおぼぉああおおあああああ!!!」 「――変な気合の入れ方だな」 岩山田から発せられた氣が爆発した。 ■中央世界管理機構――管理センター■ アクエリアスゲート管理補助システムから警戒音が流れ出した。 「…これは…アクエリアスゲートに次元固着されたプレアデスに反応です!!」 「場所の説明がややこしいねえ。プレアデスで何が起きているのです?」 「対象固体<I>(岩山田岩男)の戦闘データが改竄…数値が書き換えられて…!? 総能力値が上昇…固定限界値を超えていきます!」 「そーだね、<彼(対象個体I)>もゲート管理の適格者だから特殊な能力の発現…かな。 えーと、―――アレがあったかな」 というとマスターは自分のデスクの引き出しから機械を取り出した。 耳に装着し、液晶画面が左眼の前に来るように固定し、ボタンを操作する。 「マスター、それは一体…?」 「んー、戦闘力計測装置。スカ…スカ何たらーっていう機械なんだけど…」 カチ、カチと座標、対象固定を絞って戦闘力を計測する。 「1200…5000…おっ、超えた」 「これはっ―――!?マスター!対象固体Iの戦闘力上昇が止まりません!!!」 「そのようだね。18万…25万…あっ、画面が砂嵐」 といった瞬間に、ボン、という軽い音を立てて戦闘力計測装置が壊れた。 ぶすぶすぶす…と小さな黒い煙が機械から湧き出ている。 「計測限界超えちゃったか」 「こ、これでは、この戦闘力では焔護様が危ないのでは…!!」 「心配ないよ。焔護くんも管理級だし、それに…――――」 ■次元移動組織プレアデス本艦・超次元要塞サーペンタリウス■ 「ふん…確かに戦闘力は恐ろしく上昇しているな。…だが」 ゆっくりと焔護が刀を抜く。そのまま自然体に腕を下ろす。 一見無防備だが隙のないその姿に岩山田岩男も動けない。 「そんな小手先の技では俺の前では無力だ」 焔護の眼光が鋭くなる。一閃、刀を横に薙ぐと、 一瞬にして室内に充満した岩山田の闘気が霧散した。 「―――バ、バカなっ!?<氣>が啖<く>われる…!?」 ■中央世界管理機構――管理センター■ 「対象固体<I>の戦闘力が正常値に戻ります!!…これはいったい…!?」 「<璧>によって作り出された虚偽の氣を削除したんだ。 あの刀…焔護君の持つ霊刀<天照>は世界最凶の剣だから可能な芸当なんだよ」 「理由が漠然としすぎですが?」 「あの剣は情報を分解する。この世界群に於いては唯一無二の兵器」 「…?どういう意味ですか?」 「…そのものの<存在>しているという情報自体を消してしまう恐ろしい剣ということです」 「分かりにくいですね…」 オペレーターが苦笑しながらマスターを見る。 マスターは片方の眉毛を上げて更に一生懸命説明をした。 「唯一対抗できるのは…対の霊刀しかない。 まあ、焔護君が無意味に振り回す事は無いから安心だけど」 「対象固体<I>の戦闘力の上昇は一体なんだったのでしょうか?」 「岩山田岩男の特殊な能力…おそらく、自分の周囲の情報を書き換える力。 自テリトリー内であれば正に最強の能力だ」 コーヒーを飲みながらマスターは呟いた。 「それでも、…岩山田君には勝ち目はない」 ■次元移動組織プレアデス本艦・超次元要塞サーペンタリウス■ 「ちょっとここまで引っ張りすぎたからな。さっさと終わらせてやる」 「――何を…っ」 岩山田が叫んだ瞬間、焔護が消えた。 「消えろ」 「・・・・!!!!」 封神・緋桜 岩山田の体がばらばらになる。…斬られたと言うよりは、空間ごと断裂している。 斬られた部分から徐々に光の粒子が流れ出て消えていく。 「ば…か、な…出演してまだ間もないのにこんな扱いあんまりでは…」 「やかましい」 「だ、だが…この俺様が…」 「さっさと消えろ。行数がもったいない」 「そn」 断末魔さえ上げる事も出来ないまま岩山田は消滅した―――。 ■アクエリアスゲート―――現代■ 「というわけだ」 「どうでもいいが、回想長すぎだ、焔護」 黒咲は呆れ顔で通算14杯目の冷めたコーヒーを流し込んだ。 |