第二十二幕 魂魄治療・月ノ印

■アクエリアスゲート―――過去■

次元移動組織プレアデス――現オフィウクスゲートからアクエリアスゲートに戻った
焔護は夕霧沙姫の<呪印>を何とかするべく(笑)、応援を呼んだ――。

ちなみに、黒咲、黄坂、白峰は<事件>後、そのままアクエリアスゲートに居る。



■アクエリアスゲート―――エントランス■

中央世界から無限回廊を接続<リンク>させて二人の女性が
アクエリアスゲートに姿を現した。
焔護が<マスター>に打診して召喚した応援だ。

一人は刀を携えた長髪で着物の女性、
もう一人は真っ赤な髪をした、まるで少年のような少女。
その赤髪の少女が手を挙げながら、出迎えにいた黒咲と白峰のところに歩み寄ってきた。

黒咲綾・白峰霞・黄坂舞と同じく守護天使の残り二人だ。

守護天使について。(全然内容に触れてなかったような気がするので(苦笑)
守護天使とは次元空間の秩序を守る五人の戦隊モノのような集団だ。
マスターと呼ばれる存在の直属の部下で、マスターの命令を遂行する戦闘集団。
代が変わるごとにマスターの思いつきで五人組の集団の名称が変わる。
今代は「中央世界守護天使<セントラルガーディアンエンジェル>」という恥ずかしい名前だが、
先代は「五色戦隊マニレンジャー」という戦隊モノのよーな名称だった。
各隊員(笑)はどの代に於いてもそれぞれ木火土金水の<氣>を持つ者達で、
木氣には青龍、火氣には朱雀、土氣には黄龍、金氣には白虎、水氣には玄武の
加護がそれぞれの魂魄に宿る。
それらの加護を継承していくことによって代替わりをしていくのだ。
加護を得た魂魄を持つものは不老の追加効果があり、加護を継承した時点から
老いる事は無い。また加護を手放した時点から、老い始める。
…説明長っ。


「うーすッ」
「遅くなってすまぬな」
「あかおねえさま、先代様、お久しぶりです」
「あか、って言うなよッ、霞」

赤毛の少女が軽く白峰の頭を叩いた。赤毛の少女にとっての
スキンシップのようなものだ。
<あか>、と言うのは髪の毛の色が赤いからという単純な理由、
もう一人の
<先代>と言うのは現メンバーではない先代<守護天使>の一員でリーダーだった為だ。
リーダーを引退した今も現メンバーの一員である。



「先代、ご足労ありがとうございます」
「いや、構わぬよ、黒咲。――で、我等を呼び出した焔護は何処じゃ」

先代と呼ばれた、
外見にそぐわない物言いの、着物を着た若い女性があたりを見回す。

「―――あちらの部屋に」



■アクエリアスゲート―――ホール■

アクエリアスゲートのホールには焔護と黄坂が居た。
そして、そこに次元固着された夕霧沙姫の姿があった。
青色の透明ガラスに閉じ込められたような夕霧沙姫の姿はまるで一種のオブジェだ。


「ようッ、師匠!久しぶりだなッ」
「ああ、すまんな、わざわざ来てもらって」

師匠、と呼ばれた焔護が返事をする。

先代メンバーの一人であった<現・焔護地聖>の後を継ぐものが、赤毛の少女だ。
故あって朱雀の加護を継承し、色々指導してもらったので、
(朱雀の加護を継承することで技とか術とかも引き継がれるが、一応。)
焔護のコトを師匠と呼んでいる。
とは言うものの口調はタメ口で、実質的にはあだ名のようなものだ。

「ヘッ、感謝の言葉なんてアンタらしくねェな…っと、舞姉、久しぶりッ」

赤髪の少女が焔護の後ろにいた黄坂に挨拶する。

「あらあら、お久しぶりね〜元気してた〜?」
「ははッ、オレは元気だぜッ。そんなことより…なんだこりゃ」

後から入ってきた着物の女性も怪訝な表情をする。

「焔護、なんじゃこれは?」
「変わった趣味してンな」
「阿呆。趣味でこんな事をしているわけじゃない」

全員の眼前には空間固着された夕霧沙姫が居た。黒い水着のままだ。

「違うのよぅ。ホラホラ、ここ、ここみて二人とも」

黄坂にせかされて着物の女性と赤毛の少女が夕霧を覗き込む。
そこには呪印があった。

「ふむ。精神寄生…いや、別人格を植えつける呪術…かのう?」
「よく分かったな。
  ただもう一つ…感情が一定値を超えると暴走破滅する」

ここまでの経緯をざっと二人に話をする。

「少し、診てくれないか」

焔護の言葉に着物の女性が頷き、黒咲と共に夕霧沙姫を<診察>した。

「診た所…おそらくじゃがこ<呪印人格>は元来の人格の過去部位領域を
  占有しておる。
  …<元来の人格>自体は残っておろうが…、記憶は残っていまい」
「と言う事は<元来の人格>も過去の記憶は無い状態か。
  …<呪印人格>の<夕霧沙姫>も過去の記憶はない」
「ふーン」

赤髪の少女が腕を組んで頷いた。一呼吸置いて着物の女性が尋ねる。

「――で、どうするつもりじゃ?」
「術式を展開して感情限界による変質リミッターを解除する」

沙姫を見上げたまま焔護が答える。その言葉に黒咲が反応した。

「暴走状態を起こさせないようにすると言う事か?」
「そうだ」
「…五法封印式じゃな。
  五氣の循環を以って術の一部を変換するつもりじゃろう」

焔護がその言葉に頷くと白峰が挙手した。

「人格部のみを残すということは変換系…五法封印式<月ノ印>ですね」

<月ノ印>――五人の氣(木火土金水)を相生に循環させて
構築を分解、再構成する特殊合体技。
ちなみに、
木氣:着物の女性
火氣:赤毛の少女
土氣:黄坂舞
金氣:白峰霞
水氣:黒咲綾
対する技に<日ノ印>は五人の氣(木火土金水)を相克に循環させて放つ消滅技。
他にも4人で放つ合体技や、
以前に黒咲綾・黄坂舞・白峰霞の三名で放った「超絶業破陣」などの合体技がある。
とかなんとか。


「<月ノ印>で術式(プログラム)を展開させる。そして感情限界による
  変質リミッターを書き換え解除する」
「ふーン。とりあえずその呪印で創られた精神は何とかなる訳だなッ」

「おそらく、な。皆、―――準備してくれ」