■蒼華市―――市内■
黒咲たちと合流した沙姫だったが…結局日が昇っている間は
特にする事がなかったので、とりあえずその辺で食事を取り、
三人が住むマンションの一室へと向かった。
「これは…」
なんとも豪華なマンションが沙姫の眼前に聳え立っている。
聳え立っている、という表現がまさにピッタリなくらい、
天空に向けて聳え立っている。
塔の一階部分では侵入者を阻む頑強な透明の壁があり、特殊な術式を
入力しなければそれを開封する事すら出来ない。
現代風に言うとオートロックな訳だが。
いたるところに監視カメラがあるようなそんなマンションだ。
そのマンションの最上階へとエレベーターは駆け上がる。
軽やかな鈴の音が鳴り響くこの階数は、50。
「ついたわよ〜」
「は?ついた…とは…?」
黄坂が言った意味が瞬時に理解出来ない沙姫。
「まぁ…そうだろうな。マスターが用意したこのマンションの…
  この階全部が私たちの住居になっているんだ」
「―――な…ッ!?」
絶句する沙姫。
どこの金持ちだ、と言う話だ。
だが沙姫は忘れていた。沙姫たちアクエリアスゲートに住んでいる
3人はマンションどころか世界そのものが自分達のものなのだ。
「…このような豪勢な部屋は必要ないというのに…マスターにも
  困ったものです。結局私たちも…この階で使う部屋はいつも
  決まっていますしね」
しかも下の階5つくらいまでは入居出来ないようなつくりになっている。
黄坂がいくら暴れても大丈夫なのだ。
…本気を出して暴れると塔が倒壊する恐れはあるが。
「だが、緊急出動の時は楽だぞ。窓から飛び出してもだれも気が付かない」
しれっとそんな事を言う黒咲。
繰り返すがここは50階だ。
言いながらたくさんある中の一つのドアを開け、入っていく。
他の2人もそこに続いていくので、沙姫もそれに倣って室内へと
足を運ぶと…そこにはこれまただだっ広いリビングが。
そういえばこの奥のソファーの辺りをアクエリアスゲートでテレビ電話
している時に見たことあるな…と思いながら辺りを見回す。
「…無駄に広いだろう?いつも持て余している」
そりゃそうだろう、という感想しか出ないくらいの広さ。
その壁に大きく置かれているテレビの前で、黄坂が白い棒のようなものを
振り回した。
「沙姫ちゃーん!Wii〜」
「…はい?」
「ゲームだ。昨日もアレで遊びまわって夜更かししたんだ」
「夜更かしといっても11時くらいまででしたが」
多少呆れてものが言えない沙姫。
そんな視線に全く怯まず、白い棒のようなコントローラーを
ゴルフのスイングのように振り回す。
「レースゲームやるわよ!」
「ゴルフじゃないんですかッ!?」

――二時間後――

「はうぅうぅ…こんな…こんなバカなーーー」
そんなこんなでびっちりレースゲームに付き合わされた沙姫だったが、
飲み込みの速さであっという間に黄坂に追いつき追い越し
結局こてんぱんにやっつけたのだった。
その横で読書に勤しんでいた黒咲が顔を上げた。
「…さて、私は少しトレーニングしてくるが…沙姫、どうだ?」
「トレーニング…?それは是非」
それには少し興味があった。
黒咲たちのトレーニングとは一体どういったものなのか―――。
「白峰はどうする?」
黒咲の問いに―――、白峰はゆっくりと首を横に振った。
「申し訳ありません、綾お姉さま。
  まだ連休中の宿題が終っておりませんので…。」
すっかり忘れているが、白峰はまだ学生なのだ。
いや、沙姫も学生なのだが。
ちなみに、宿題が終っていない理由は言うまでも無く
黄坂の子守をしていたからに他ならない。

そうこうしているうちに夕方近くになった。
徐に――白峰が立ち上がり、エプロンを付け始めた。
そう、ここでは白峰が食事を作っているのだ。
「白峰、手伝おうか?」
さすがに何もしないまま、というわけにはいかない。
というか、ここまで何しに来ているのだろうか、という疑問が…
「いえ、お客様にそこまでしていただくのは申し訳ありませんし、
  どうぞごゆっくりなさってください」
「…いや、いままでものすごくゆっくりしていたからな…。
  せめて何か手伝いたい。あまり料理はしないが野菜を切るのは得意だぞ」
そう、沙姫は野菜のカットは得意なのだ。
いつも刃物を振り回しているだけのことはある。
「…そう、ですか…。では一つお願いします。
  野菜炒めを作りますのでこれらを千切りに。」
「――ああ。」
チョイン、とキャベツの千切りが完成した。
「メインの食材は現在綾お姉さまが買い出しに行っておられますので、
  それが到着しだい、ということで。
  私たちは下準備をしておきましょう」
「いつもこんな感じなのか?」
「ええ、概ね。時折外食をしますが…基本的には
  綾お姉さまが買出し、食事を作るのは私、です。」
黄坂は一体どうしているのだろう、という疑問がふとよぎった。
それを察したのか―――
「舞お姉さまには今までずっと作ってもらっていたので…。」
珍しく苦笑交じりの表情を見せる白峰。
白峰も、黒咲も―――大きくなるまで黄坂に育てられてきたような
ものなのだ。…となると黄坂って何歳?という話になるが
それはまた別のお話で。
尤も――黒咲はそれなりの年齢になってからこの不可思議グループの
一員になっているのだが、意外なことに(?)家事があまり得意ではない。
その為、昔から買出し係りを買って出ているのだ。
「今日は六人分を作ります」
「六人?」
「ええ。先代様とあかお姉さまがお越しに―――」
と、ピクッ、と白峰の動きが止まった。
「お静さんとほむらちゃんきたみたいよー!」
とリビングの奥のほうから黄坂の声が聞こえる。
「…私には全然感じなかった…さすがだな、<氣>を読んで
  二人が来たのが分かったのか」
「―――あ、いいえ、そこに玄関のモニターがついてますので」
文明の利器ってすごいなー、と再認識する沙姫だった。
というか、気が付かない沙姫のほうがすごい。
いやむしろ、これを文明の利器として賞賛する沙姫こそ…すごい。

■玄関■
「おうっ、邪魔するぜッ!」
そう元気にいいながら入ってきたのはもちろんほむらだ。
その後ろにはいつものように着物を着た青瀬も居る。
「へっへ、舞姉…今日は負けねえぜッ…っと、ありゃ?
  沙姫じゃねェか!どうしたんだよこんなとこで?」
「あぁ…いや、な」
ほむらはおそらく黄坂とゲームで対戦しているのであろう、と
思いながら…青瀬を見る。
自分がここにいる理由、ほむらは聞いていなくても青瀬なら
知っていると思ったのだ。
そんな青瀬もアイコンタクトを察知したのか、ゆっくりと頷く。
「おぬしにはまだ話しておらなんだが、沙姫も町の巡回を
手伝ってくれるのじゃ。」
「お、そーなのか!よろしく頼むぜ、沙姫っ!」
背中をばしばしと豪快にはたくほむら。
いつもながら豪快なやつだ。
だが、そういってくれるのは嬉しいな…という気持ちを込めて
「ああ」
と短く答える沙姫であった。
「黒咲は外出しておるのか?」
「はい、夕飯の追加食材を仕入れに出ております」
「うむ、では黒咲が戻り次第会議をするとしようかの」
意外な事にこの五人も会議をしているようだ。
「――先代様、腹が減っては戦は出来ぬと申します。
  もう暫くお待ちくだされば夕飯が出来上がりますので」
「うむ?そうか…ならば馳走になってから会議を始めるか。
  これ、ほむら。お主も手伝ってまいれ」
「うぇえ!?オレもかよッ。せっかく舞姉と対戦しようと
  思ったのによォ」
今のところほむらの戦績は0勝12敗だ。
弱い。
すっごいよわい。
とりあえず叫び声をあげてコントローラーを振り回すものの、
いつも気合だけが空回りしているような状態だ。
「つべこべ言わずに行くが良い。客人である沙姫も
  手伝っておるのじゃのぞ」
「へいへい」
「返事は一度で十分じゃ」
ぺし、と持っていた扇子でほむらの頭を叩く。
それに「へーい」と答えながら、黄坂が出していた皿を
テーブルの上に並べて、出来上がった料理を盛り付けていく。
一方の沙姫も白峰の指示に従い野菜を高速でカット。
そこへ買い出しに出かけていた黒咲も戻り――、
こうして、料理は完成をみたのだが――
食事に関しては特に特筆すべき点が無いのでこのシーンはスキップする。
食事中にほむらがあれこれ青瀬に注意を受けていたのだが
それはいつもの光景だ。
そしてグリーンピースを必死に残そうとする黄坂と白峰の間に
激戦が繰り広げられたのだが、これもいつものこと。
餃子に練りこまれたペースト状のグリーンピースについては
黄坂は気づかずに完食していた。
白峰の作戦勝ち。

「さて―――」
と、食後のコーヒーを飲み、それをコト、とテーブルの上に
置いて、黒咲が口を開いた。
注釈しておくと、黒咲と沙姫は意外な事に晩酌をしていない。
それは置いといて、別室から持ってきたノートパソコンを
眼前の巨大モニターに繋ぎ、いろいろ操作してそこに
町の地図が映るように設定した。
黒咲は見た目がキャリアウーマンっぽいのだが、見た目どおり
パソコン関係にも強いようだ。焔護ほどではないが、
キーボードの上で指が軽やかに踊っている。
「これが昨日までの<屍人>の出現ポイントだ。
  現状、特に法則性のようなものは見受けられない」
地図画面の下に別ウインドウが開いてなにやらよく分からない
グラフが現れた。それの内容を理解しているのは白峰くらいだ。
ほむらは言うまでも無く、黄坂も機械関係はさっぱり。
青瀬もよく分かっていない。
データ関係を作成しているのはマスター直属の部下で、
黒咲はそのデータを受け取っているに過ぎない。
「確かに…発生時間・発生場所共にバラバラのようですね。
  発生箇所はこの町の内部のみのようですが…」
「そうだな」
「この発生箇所には、特別な何かがある…という訳ではないのか?」
ふとした疑問を口にする沙姫。
「今まで交戦した場所には特別なものは何も無かったのう。
  お主たちはどうじゃ?」
「う〜ん、特に何にも…。霊的な建物とかも別に無かったわ」
「…霊的な、何かというのは?舞お姉さま、以前に
  地脈が乱れている、と仰ってましたが…」
「うー、前は特に感じなかったけど…ねえ」
そう言いながら、ベランダへと出る。
「何を…?」
「ん、ちょっと地脈の霊視を、ね」
地上百数十Mから見下ろして地脈の流れを視る、という。
さすがは黄坂舞、いつもほわほわしているだけではないな…と
内心で感心する沙姫。多少失礼なことも考えたようだが。

――黄龍眼!

地脈をレントゲンのように見る特殊な瞳へと変化する。
「あらら…?綾ちゃん、ちょっとそれ…その地図プリントアウトできる?」
「え?ええ。何か気が付かれたのですか?」
「場所、って言うんじゃないんだけど…なんだか地脈が
  乱れて…本来出ない部分で小さな氣穴が出来てるわ」
たとえるなら水が流れているホースに所々針で小さな
穴を開けているような状態。
その針の穴から水が噴出すように、大地の<氣>が流れだし、
氣穴を形成している。
「――あら?…氣穴が…一つ閉じたわ…」
「それってどういう事なんだよ、舞姉?
  勝手に氣穴って閉まるものなのか?」
「ううん、こういうイレギュラーな氣穴は封穴しないと…
  でもそんな簡単なものじゃないのよ。完全に封じることなんて
  誰にも出来るってわけじゃ―――」
小さいながら地脈の制御を行うということはなかなか難しい
ことのようだ。そのようなことが出来そうな人間は―――
と考えて、沙姫は一人思い当たる人物がいた。
地脈を守護する一族、と先日聞いたばかりだ。
「黄坂、冥さんでは…?」
「―――ッ。」
驚きと納得が入り混じった複雑な表情で振り返る黄坂。
「たしかに、黄坂家の人間だったら…封穴は出来るわ。
  ということは私たちより早くこの状況を理解して動いている、ってことね」
「舞お姉さま、地図です―――」
「うん、ありがと、霞ちゃん」
受け取った地図を見て、一つ頷く黄坂。
「確かに―――今までの発生場所は…大地の霊絡、地脈上で起こってるわね。
  でも…今見えてる<氣穴>の上ではないみたい」
「でもその<氣穴>が臭ェんだろ?だったら行ってみるしかねェよッ」
既に行く気満々で勢いよく立ち上がるほむら。
もともと会議とか嫌いなほうで、現場に直行したいタイプなのだ。
故に、会議中は基本的に黙っている。
「そうだな。今まで全く手がかりが無かったし、これから
  当たってみるのも悪くは無い、か。」
「舞、ここから町の全貌―――町に発生しておる<氣穴>は全て
  把握できるかの?」
「ん〜、そうねえ…ぎりぎり、分かる程度かな。」
「うむ、ならば―――」
「そうですね、先代。―――舞さん、舞さんはここから
  我々に指示を。地上にいた状態では気穴の位置が掴み辛い」
「…了解よ、綾ちゃん。
  封穴なんだけど、<四位封式>でとりあえず穴は防げるわ。」
四位封式―――起点となる四点を楔のように打ち込み、
ピラミッド型に形成される結界式だ。
楔のように打ち込む媒体は勿論<氣>。
本来は<異形のモノ>を一時的に封印する為の結界である。
今回の場合、穴を上から押さえつけるような役割―――
ホースの穴にテープを張って応急処置をするのと同義だ。
ただ、応急的な処置なので長くはもたない。

「私と白峰、先代とほむらと沙姫の二班で行く。
  各現場に着いたら舞さんに携帯で状況を報告。」
  基本行動はこれで行くが状況が変わり次第各人で行動を判断」
「了解しました」
「よっしゃ!やるぜッ、沙姫!」
「わかった」
ほむらの勢いの良い言葉に、沙姫も勢いよく頷く。
「よし、では―――」
と、黒咲の掛け声で全員がベランダに―――…
「え?え?」
「さっきも言っただろう?この立地は何かと都合がいい」
黒咲が笑いながら――戸惑う沙姫に振り返る。
つまり、ここから飛び降りて出発する、ということだ。
上空百数十M。
「ははッ、恐ェのか、沙姫?」
当たり前だ。
これでは飛び降り自殺と変わらない。黒咲たちと違って
そこまで<氣>を自在に操れているわけではないのだから。
「沙姫、儂に掴まっておれ。但し眼は瞑るな。
  お主もこういうことに慣れておかなければならんからな」
「え?」
「――行くぞッ!」
その声と共に、黒咲と白峰が同時に飛び降りた。
黒と白の閃光が流れ落ちるように塔の壁面を彩り、
そのまま民家の屋根に飛び移っていった。
一瞬にしてあっという間に夜の闇に消えて行った二人を、
無言で見送る沙姫。
無言というか、言葉が出ない。
「我らも参るぞ」
「ぁ―――」
返事を待たず、青瀬が沙姫を抱きかかえて宙に身を躍らせた。

■街中―――夜半■
夜の街を駆ける事数分。
まだまだ宵と言うには早い時間にも関わらず―――
人気が少ない。
そんな路地を突き進み、指定ポイントに到着する。
「ここが…氣穴という所なのか?」
「うむ。氣を研ぎ澄まして感じてみよ。他の場所とは
  明らかに違っておろう。」
確かに―――微量だが清冽な氣が立ち上がっているのが分かる。
―――と、辺りの風景が赤く一変した。
陰気の結界。位相が数度ずれただけで―――そこは異空間となる。
現世には影響の出ない特殊な空間だ。
「うおッ、ビンゴか!?」
「そのようじゃな」
「な、なにが…!?」
沙姫の疑問はすぐに解消された。目の前に屍人が登場したからだ。
まるでロールプレイングゲームのランダムエンカウントのように
敵が現れた。それも1体ではない。
「「「「「ギシャアアアアア!!!!!」」」」」
5〜6体の屍人が三人に襲い掛かった。
「―――雑魚がッ!!」
ほむらが勢いよく屍人を蹴り上げ―――上空2mくらいに
舞い上がったところに零距離射程で炎剄を放つ。
爆裂する衝撃と共にバラバラに吹っ飛ぶ屍人。
「はぁッ!」
久しぶりとはいえ、焔護との模擬戦闘で訓練していた沙姫も参戦。
抜き放った白刃を袈裟懸けに振り下ろし、雷撃を飛ばす。
紫電一閃<雷光剣>。扇状に広がる紫電が
屍人を撫でるように駆け巡る。瞬間、屍人の躯ともども青白く弾けた。
「ほォ、焔護から聞いておったがたいしたものじゃ。
  そこまで雷氣を操ることが出来るとは」
感嘆の声を上げる青瀬。
自身の属性も<木氣>で雷を操る。それ故よくわかるのだろう。
そんな青瀬は腕を組んだまま二人の戦闘を眺めている。
まるで先生だ。
いや、高校の先生なのだが。(非常勤講師)
「オオオオ!!!」
「うるせェッ!」
倒してもまた立ち上がり向かってくる屍人を、これでもかー!と
ばかりに殴りつけるほむら。
屍人の見た目はかなりグロテスクなのだが、ほむらは全然気にせず
素手で殴り飛ばす。炎氣を纏っているため、直接殴ったとはいえ
自身の拳に触れるわけではないようだ。それでもホントに
女の子か?という戦いっぷりに沙姫はある意味感心していた。
「しかし…これは―――きりが無いな…ッ」
振り下ろした切っ先から雷球を放ちながら、沙姫が戸惑う。
倒しても倒しても何度も立ち上がってくるのだ。
もともと死んでいる存在だから、かも知れないが切が無い。
少し息を切らし始めた沙姫の肩に青瀬が手を置く。
「沙姫、そういう時は立ち上がれぬまで撃破し荼毘にふしてやればよい」
「え?」
すぃ、と沙姫の側を横切り、青瀬が抜刀した。
涼やかな、としか表現しようが無い青瀬の構え。
「シャアアアァアア!!」
奇声を発しながら飛び掛る屍人を―――まるですれ違うように
交わして、とん、一歩前に踏み出した。
―――瞬間。
文字通り、ばらばらになった。それに電気の帯が走り、
そのまま爆散。今度も文字通り粉々に消滅した。


既に納刀状態。
いつ斬った?という早さだ。
「まぁ、あれじゃな。火力の問題じゃ」
涼やかな表情で振り返る青瀬。凛としたその雰囲気に
惚れそうな沙姫。
「ひゅう!やるねェ!」
「おぬし等の打撃は表面のみしか伝わってないからじゃ。
  特に沙姫、お主の獲物が刀ならばワシと同じことは出来よう。
  こういう、硬い奴等には剛剣で捻じ伏せるのじゃ」
――剛剣、成る程、と思いながら切っ先を敵に向ける。
全身のバネを利用し、遠心力をかけて、斬り倒す!
屍人の肩口から脇腹にかけて閃光が走り、そこからずり落ちる。
さらに半回転しながら横薙ぎで吹っ飛ばし
その瞬間に刀身から放電!
見様見真似で青瀬の技を拝借する。
「―――ん…?」
だがしかし、よく考えると青瀬は思いっきり踏み込んだり遠心力を加えず
ただの斬撃で屍人をバラバラにしていた。
やはりこの実力の差は大きいな、としみじみ思う沙姫であった。