■アクエリアスゲート 喫茶宝瓶■

喫茶店を模した…というか、キッチンが対面になった
部屋で水姫、澪、沙姫の三人が寛いでいた。
特に喫茶店というわけではないのだが、澪がカウンターの向こう側で
いろいろ準備したりしているのでいつの間にかこの名称に
なったようだ。
中央世界に行っていた三人だったが、早々に戻ってきたようだ。
それぞれがそれぞれのいつもの衣装に着替えている。
水姫はタンクトップにミニスカとニーソックス。
澪はメイド服。
沙姫はパンツルックにハイネックという動きやすい格好。

「澪ちゃんっ、このお菓子美味しいね!」
「さすが澪だな…」
「ふふっ、ありがとうございます。そういっていただけると嬉しいです」

そんな感じでわいわいと、澪が淹れた飲み物とお菓子を楽しんでいると、
焔護が戻ってきた。

「―――あれ?紫苑と刹那はどしたのさ。アクエリアスゲートに来てる、
  って聞いたけど…」

一人で戻ってきた焔護に、怪訝な表情で水姫が尋ねる。
せっかく紫苑と刹那にあれやこれやしようと思っていたのに、
…もとい、紫苑と刹那とあれやこれやしようと思っていたのに、
という感じの残念な波動がだだ漏れだ。

「あぁ、あの二人なら今風呂に行っている。
  二人で乳繰り合っているのは想像に難くないな」
「どういう想像をしているんだお前は…」

沙姫がジト目で焔護を見た。

■アクエリアスゲート・浴場■

「先入っているよー、しおーん」

颯爽と素っ裸になった刹那は、紫苑に声をかけると
タオルを巻きもせずに、わーいとばかりに浴場の扉を開いた。
檜の香りが鼻腔をくすぐる。

「うわぁ、すっごいなッ」

天然檜造りの浴場は、程よい温度で満たされていた。

「―――これは、凄いな」

後から来た紫苑も感嘆の声を漏らす。
自宅ではありえないほどのスケールの風呂が眼前に広がっている。
たぶん、泳げる。水深はそれほど深くないようだ。
刹那の観察眼が光る。
――それじゃぁ、泳ごうか、紫苑、という為に振り向いた刹那が
見たものは、セクスィーな感じでタオルに巻かれた紫苑だった。

「なんだよ、紫苑。タオルなんか巻いちゃってさ。
  ボクとキミの仲だろ!」
「あっ、ちょっ、やめろ刹那っ!」

紫苑の抵抗も空しく、あーれーとばかりにタオルがひんむかれる。
なんだかんだで刹那に対しては強く出れない紫苑。
…と、刹那の目が光った。

「んん〜?しおーん、おっぱい、またおっきくなったね?」
「ななな、な?」

紫苑の頬が一気に上気する。普段真面目な分、こういう話題には
かなり弱い紫苑は明らかに動揺していた。
―――が、刹那の指摘は正しかった。
最近ちょっと、苦しいかも…なんて思っていたところだったのだ。

「あッはッは、ボクの目はごまかせないぞぅ!
  いっつも見てるんだから一目瞭然さ!
  前にも増してナイスバディになってるじゃないかっ。いいなぁ」

刹那の体型も別段悪くはない。
胸もそれなりにあるわけだし、くびれているところはしっかりくびれている。
だが、どちらかというと、刹那の体つきは少年のように
がっしり…しっかりしているのだ。
これは「普通の武道」を嗜んでいるからこそなのだが―――
ううむ、ううむと唸りながら紫苑の胸を凝視する刹那。

「あ、あんまりじろじろ見るな」

羞恥に頬を紅く染めながら身を捩る。
なんとも色っぽい仕草に、クラクラと来ながら―――、

「――ねぇ、紫苑」
「な、なんだ…?」
「おっぱい触っていい?」
「ぶふーっ!?」

紫苑が吹いた。それはもう盛大に。
その隙を突いて――刹那の掌が紫苑の胸に伸びる。
それはまさに刹那の瞬間。
武道の達人同士だが、初動の遅れは響く。さすがの紫苑も対処できない。
鷲掴みの型に開かれた掌の襲撃は、紫苑のその豊満な双丘の
片方を、わしっ、と、掴ん…

―――もにゅん。

刹那は我が目を疑った。
――否。
我が掌の感触を―――疑った。
――なに、これ?
絹のように極め細やかな肌。それは知っている。
だがこの柔らかさはなんだ?
マシュマロ。
言いえて妙であるが、まさにこれは、マシュマロだ。
柔らかすぎもせず、その形を見事な美しさに保つ、
ギリギリのライン。それが、その柔らかさが掌に伝わってくる。

「…刹那?」

無言で紫苑の胸をもにゅもにゅと弄る刹那を、なんとも言えぬ表情で見る。
そんな刹那は徐に手を離し、自分の胸を揉んだ。
ニ〜三回揉んで、そして紫苑を見上げる。

「なんで…そんなに柔らかいの?」
「え?」

――別に刹那の胸が堅いわけではない。
張りのある形のいい胸をしているのだが―――、
紫苑のそれは極上だった。
そういえば、紫苑の体つきって適度に脂肪がついてて
丸みがあって、なんだか女の子っぽく…、
それと比べると自分の体って、なんだかがっしり筋肉質…。

「――これは徹底的に調査する必要があるようだねッ」

刹那の双眸がぴっかりーん!と煌めいた―――。