【烈火】

■桜舞市―――路地裏・夕刻■

「どうな―――ってんだよッ、これッッ!!!」

赤毛の少女――――焔護から受け継いだ魂魄の加護<朱雀>を
持つ、赤城ほむら<あかぎほむら>は
累計13匹目の異形のモノを轟音と共にぶっ飛ばしながら毒づいた。
ただ…表情は嬉しさそのものだが。
毒ずく理由は、―――その<原因>。敵がわんさか出てくる原因についてだ。



ぶっ飛んでいった異形のモノはその霊気の負荷に耐え切れず
粉々に弾け飛び、霧散していく。

「黄昏時だからッつってッ!何でこんなに出て来やがるんだよッ!!」

14匹目を燃える拳で殴りつけた所で、ポケットから電子音が響いた。
―――携帯電話だ。
着地と同時にスカートのポケットに手を突っ込んで携帯電話を取り出して
異形のモノの攻撃をかわしながら着信名を確認する。

「―――ちッ、こんな忙しい時に―――っと、綾姉かッ。

 無視する訳にもいかねェな…ッ!!」
15匹目を回し蹴りの要領で遠心力たっぷりつけて蹴り飛ばしながら携帯電話に出る。

「おうッ、オレだぜッ!」

どういう電話の出方してるんだ、というツッコミどころは在るものの、
いつもどーり、元気よく―――16匹目の異形のモノを清冽な炎氣の発剄で
ぶっ飛ばしながら、出た。
ほむらの耳に聞きなれた静謐な声が響く。

『ほむら、緊急集令だ。すまないが急いで本部の方へ来てくれないか?』
「分ったぜッ…と言いてェところだけどよ、綾姉ッ!!
 ちょっとこっちも立てこんでてよッ…っとッ!あぶねェ!」
『―――交戦中か』
「…あァ、なんかよくわかんねェけど、すげェ出てきやがったぜ、こいつらッ。」
『そうかやはりもう影響が出始めているのだな』
「え?何言って…」
「GUOOOOOOOOO!!!!」
「――ああッ!!うるせェえええッ!!聞こえねェじゃねェかッ!!
 オレの邪魔をすンじゃねェッ!!!!」

18…匹目か19匹目か…まァ何匹目でもいいのだが―――
その襲い掛かってきた異形のモノを―――
思わず携帯電話を持った手で殴りつけた。

「―――あ。」

電話は軽い音を立てて壊れた。
                                      つづく。