■草原の街■
【水姫】うはーっ、焔護さん、街だよ街っ!!すっごーいっ!!
    本物みたいだよ!?


街の門をくぐるとそこには中世風のレンガの町並みが広がっていた。
結構な広さのある街のようだ。
そこを跳ねるように駆けて行く水姫。
焔護はそんな水姫を見ながら―――周囲を観察してつぶやいた。

【焔護】…ふむ。本物だな。
【水姫】えっ、本物なの、これ?
【焔護】ちゃんとしたレンガで造られているし、木も本物だ。

路面に敷き詰められたレンガを触りながら焔護が答える。
見た目は勿論、材質も確かな物だ。

【水姫】あっ、こんにちわっ。
【門の近くにいた女性】こんにちは。旅のお方ですか?ようこそ。
【水姫】うわー、ゲームとは思えないね、焔護さん。
【焔護】…本物だな。本物の人間だ。
【女性】げーむ?

焔護と女性の声が重なった。焔護の声には多少の驚きが
含まれていたが、それよりもっと驚愕したのは水姫だった。

【水姫】ええええっ!?ボ、ボク達ゲームの中にいるんじゃないのっ!?
    どうしてっ?なんでゲーム世界の中に普通の人間が居るんだよ?
きょとんとしている女性をよそに、焔護をまくし立てる水姫。

【焔護】違うな。お前がいるアクエリアスゲートと同じ構造だ。
    すべては本物…。この人間達をどうしたのか、も想像がつく。
【水姫】そ、それってどういう意味…。
【焔護】おそらく中央世界から拉致された人たちだろう。
    洗脳かなにかは分からんが記憶の操作をされているんだろう。

要は、水姫や澪みたいなものだ。
中央世界から―――ゲートに連れてこられた人たち。
「ゲートのように作り出された世界に住人は居ない」。
そんな焔護と水姫の会話をニコニコと聞いている女性。

【女性】あら、難しいお話をされるのね。
    それはともかく――どうぞ旅の疲れを取ってくださいね。

街の女性はそれだけ言うと、「元いた場所」に戻っていった。

【水姫】う、うんっ、ありがとっ。
【焔護】―――いくぞ。
【水姫】はーいっ!!

先をあるく焔護の後をきょろきょろしながら水姫が付いて行く。
ふと、焔護が古ぼけた木造の建物の前で立ち止まった。

【水姫】どしたの?ここに何かあるの?えっと…魔法屋…?
     魔法、って…あの魔法?呪文唱えて火とか氷とか出す―――。
【焔護】―――ああ、その<魔法>のようだな。

木作りの扉を開けて中に入ると、昼間というのに薄暗い。
外の光を遮断している作りだ。なんだか、カビ臭くもある。

【焔護】ふーん、魔法屋、か。やっぱりそれっぽい作りだな。
    怪しさ全開だ。
【水姫】ウン、雰囲気でてるよね〜。
    お昼なのに締め切ってさ、ローソクの明かりだけで店内照らしてるし。

奥に進むと、やっぱりそれっぽい雰囲気の店主がいた。
立派な口髭と顎鬚が真っ白だ。

【店主】ようこそ、旅人よ。何をお望みかな?

店主が口を開いた。しわがれた声だ。見た目相応の声に、焔護は一つ頷いた。

【焔護】魔法について教えてくれないか?

店主は、うむ、といいながら紙を取り出した。
古く、色あせた紙には思いっきり日本語で説明文が書いてある。

【店主】この古代語がよめるかのう?
    この言葉を気持ちを込めて唱えることによって―――
【水姫】古代語…って、普通にボクたちが使ってる言葉だけど…
    ええと、こと…れいで構成された―――…
【焔護】それは言霊<ことだま>、と読むんだ。
    …成る程な…。「仕組み」は同じようだな。
    で、ここ<魔法屋>ではその魔法の構成文を教える、ということか。
【水姫】構成文?
【焔護】簡単に言うと、<呪文>だな。
    唱えることによって未来における既成事象を変異させる。
    まぁ、これはゲート内部においての事象変異を起こすものだが――
    中央世界ではまたそれとは違うつくりにはなっているがな。
    ただ、今回の場合はゲート創世と基本的に同じだから―――
【水姫】???
    焔護さん、ボク難しい話はよく分かんないよ…っ。
    もーちょっと簡単に説明してよ。じじょーとかややこしい単語はパース!
【焔護】うむむ…簡単に説明…も難しいんだが…。
    まず、結果を設定する。
    「ここに火が出る」という結果を求めるには、世界を構成するプログラムに
    介入して、プログラムを強制変更する。
    その為に、「呪文」という形でプログラムに割り込み、書き換える。
    「呪文」もタダ唱えるだけではダメだ。文章に言霊を載せて唱えなければならない。
    後はコンパイルを…
【水姫】…。
【焔護】寝るな、水姫っ。
【水姫】―――はっ?
【焔護】話が分からんからって…寝るの早すぎだぞ…。
【水姫】えへへっ、ゴメンゴメン。

ごほん、と店主が一つ咳をした。

【店主】それで、魔術書買うかね?色々あるぞ?
     炎の魔法、氷の魔法、雷の魔法…
【焔護】いや、いらない。
    仕組みさえ確認できれば問題ない。―――いくぞ、水姫。
【水姫】は、はーいっ。

店主の鋭い視線を避けながら二人は店を出た。

■店の外■
【水姫】ねえ、焔護さん…これから冒険するなら魔法の一つでも
     買っておけばよかったんじゃない?

水姫が焔護の顔を覗き込む。その視線を外すように遠くを見た。
美しい蒼穹が山々の稜線に続いている。…のどかな風景だ。
視線を水姫に戻し、口を開いた。

【焔護】そもそも、我々は冒険しにきたわけじゃないし、それに
    あんな初歩の<法術>買うなんぞ無意味だ。
【水姫】どーいう意味?
【焔護】俺には必要ないってことだよ、水姫。よく見ていろ…「炎」。

焔護が呟くと目の前に小さな炎の塊が出現した。ゆらゆら揺らめくピンポン玉程の炎の塊。
指を鳴らすと炎は霧散した。

【水姫】ええっ!?焔護さん魔法使えたのっ!?
     実は魔法使い!?魔法使いエーンゴ?
【焔護】エーンゴってなんだ…。―――ともかく、
     ここでいう魔法の仕組みと俺がゲートで使う術の仕組みが同じってことだ。
     ま、相性があるから得意なもの不得意なものはあるが…。
     アクエリアスゲートにいる時みたいにやりたい放題とはいかないが…
     構成する基本構造は同じようだ。
    ―――いずれやり方を手取り足取り腰とり教えてやる。
【水姫】うんっ、楽しみにしとくっ。
【焔護】とにかく、俺達に必要なのは情報だ。この世界の、な。

■防具屋■
【水姫】なんかいろいろ売ってるね〜。

店内に所狭しと並べられた鎧兜を見ながら水姫が呟く。
中には使い道のよく分からないものまである。

【焔護】おっ、水姫、これなんかどうだ?試着してみろ。絶対防御力上がるぞ!!

嬉しそうに焔護が女性用防具を水姫に渡す。
それを受け取って試着室に入る水姫。

【水姫の声】んっ?ええ?なにこれ?どーやってつける…あ、こうか。
      あ、これマントか。でもこれじゃあ…
【焔護】試着できたか?
【水姫】ま、まだちょっと…って、焔護さん、まだだってば!!覗いちゃダメ!!

とかなんとか言いながら水姫が試着を終えて出てくる。

【水姫】ねえ、焔護さん…これじゃ肌が露出しすぎて全然防護服の
    役割果たしてないよっ?

水姫が着たのは殆どビキニのような鎧だ。
鎧らしい部分と言えば―――肩当と膝、脛当て、腰の周りだけ。
肝心の体の部分が恐ろしいほど疎かになっている。

【焔護】いろいろなゲームじゃそんな鎧多いみたいだぞ?
     まあ、確かに防御力があるかどうかは不明だけどな。
【水姫】あーっ、ひょっとして焔護さん、ボクのこの姿見たいだけなんじゃないのっ?
【焔護】そのとおり。
【水姫】もうっ、焔護さんったら〜。



しゃっ!!と試着室のカーテンを閉めて着替えなおした。
再びごそごそと衣擦れの音がして―――少ししてから元の服装に戻した。
【水姫】やっぱりボク、いつものでいいよっ。
【焔護】残念だな。

そして、散々店内の商品を冷やかすだけ冷やかして何も買わずに店からでた。

■街中―――道■
【焔護】ふー、ツッコミどころ満載だなこの世界は。
【水姫】そーだよねえ…。あんな兜かぶってたら頭が重くて逆にふらついちゃうし…、
  ボクが試着した鎧も防御しなきゃいけないところが丸出しだし。
【焔護】見た目じゃなくて―――
     見えない力で守られるから防御力があがるのかもな。
【水姫】結局何も買わなかったけど、どーして店に入ったの?
    …まさか、あの鎧をボクに着せる為「だけ」に入ったとか?見たい「だけ」で?

焔護は口笛を吹くそぶりを見せた。音は出ていない。

【水姫】図星だね☆
【焔護】ま、それに我々にとって得るものは無いからな。
     さっきも言ったが欲しいのは情報のみだ。
【水姫】ふーん。それでなんかいい情報入ったの?
【焔護】ああ、まだ試してないけど面白いことを聞いたぞ。  
    こうやって、手のひらを開いて…

右手を開いて掌を上に向ける。

【焔護】メニューオープン。

ブン、と小気味のいい音がしたかと思うと、半透明の
縦20cm・横15cmくらいのスクリーンのようなものが出現した。

【水姫】わ!わ!!なにそれっ!?ボクも出来るかな?
    めにゅーおーぷんっ!!

同じような仕草で同じ言葉を叫ぶと、やっぱり同じような
感じで半透明のスクリーンが展開された。

名前:朝霧水姫<あさぎりみずき>
性格:能天気
ジョブ:スイマー
アビリティ:テンプテーション
武器:なし
装備:布の服
持ち物:回復薬×3

【水姫】おおおっ、すごい〜。名前とか、持ち物まで…って、
     ボクの職業「スイマー」になってる!!
【焔護】…水着ばっかり着ているからかもしれんな。
【水姫】だったら、グラビアアイドルとかそんな方がよかった…!!
     焔護さんの職業は?

名前:焔護地聖<えんごちせい>
性格:変態
ジョブ:ゲート管理者
アビリティ:封神流剣術
武器:天照
装備:スーツ
持ち物:回復薬×3
所持金:300G

【水姫】ゲート管理者…そのままだね。
     ん?性格欄、変態になってるよっ!!あははっ!!
爆笑する水姫。
【焔護】う、うるさいっ。そーいうお前はどうなんだよ。
【水姫】ボク…。の、能天気…。あんまり人のこと笑えないなー。
【焔護】(こんなことまで解析されているのか…)
【水姫】あ、持ち物の所に―――さっき敵倒したときに手に入れた
  アイテムがあるよ!…あ、これはお金かー。
  銀行預金の通帳見てるみたいだねえ。
【焔護】…そうだな…。どうやらこの金額では回復アイテムくらいしか買えそうに無いな。
     …買う必要は無いけど。

二人でステータス画面を見ながらあれこれ言っていると、
街の奥の方から喧騒が聞こえてきた。
大きな怒鳴り声や、何かが倒れたり壊れたりする音。
焔護と水姫は顔を見合わせた。とりあえず黒だかりの人ごみに近づいていく。
黒だかりすぎて何をやっているのか全然見えない。

【焔護】何があったんだ?
【町人】ああ、また奴等だよ…ホント好き勝手して…。
【水姫】やつ等って?
【町人】なんだ、あんたたち知らないのか?旅人か?
【焔護】まぁ、そんなところだ。で、それはなんなんだ?
【町人】この街に住み着いたごろつきさ。
    あぁやって待ちの人に暴力で無理矢理言うこと聞かせているのさ。

黒だかりの隙間から、露天商に絡んでいる数人の巨漢が見えた。
それ以外にも巨漢数人が肩で風を切りながら村の中を闊歩している。
露店などで売っている食べ物を勝手につまんでは…
つまんでは、というより、鷲掴みにしてくちにほおりこんでいる。

【焔護】なんだあれは?典型的な悪役だな。
【水姫】だね。
【別の町人】この村を荒らしまわっている無法者よ!!あいつ等のせいで…!!
【町人】うわっ、こっち来たぜ!!はやくあんた等も逃げろ!

町人はそういうと一目散に逃げていった。

【焔護】イベント発生と言うやつか。やれやれ…。
【柄の悪い巨漢】ぐははははは!食い物をだせー!!

がしゃーん!!と露店を張り手でなぎ払う。

【焔護】うわー…、絵に描いたような悪漢だな。逆に見ていて晴れ晴れする。
【水姫】何言ってんのっ、焔護さん!!ボクあったまきたよっ!!!

いうやいなや、巨漢の無法者のところへ駆けて行く水姫。
変に正義感が強い。

【焔護】あ、バカ。

焔護が止めるまもなく、巨漢たちのところに走り、ざざーっと、巨漢に仁王立ちで立ちはだかり、
―――びし!と巨漢を指差した。

【水姫】こらーっ!!止めなさいっ!!その人困ってるでしょっ!!
【柄の悪い巨漢】あぁ?
【別の巨漢】なんだおめえは!?この村のもんじゃねえなあ?
【水姫】だからなんだよっ!?
【更に別の巨漢】ごちゃごちゃ言ってると犯っちまうぞおぉお!?

ぬうう、と水姫に巨漢の手が伸びる。

【水姫】きゃっ!!

と、その巨漢の腕を焔護が掴んだ。

【焔後】水姫、後先考えずに飛び出すな。
    意思だけあっても力だけあってもダメだっていう話聞いたことないか?
    なんかそれでいろいろ少年たちが悩んでいる話が―――
【水姫】焔護さはぁんっ!!
【柄の悪い巨漢】なんだてめえはっ!

ぶぅん!!と腕を振って焔護から離れた。既に目は血走っていて臨戦体制だ。
こう言う輩はすぐに頭に血が上る。

【焔護】(…む、こいつ…<氣>の流れが…)
【更に更に別の巨漢】その小娘は俺達が頂くんだ!てめえはうせな!!!
【柄の悪い巨漢達】ぐははははは!!ばーかめー!

なんだかなーな内容のせりふを吐きながら下品な笑い声で
他の巨漢も笑う。凄く可笑しそうに笑う。

【焔護】ほう。

水姫の目に、一瞬焔護が揺らめいたように映った。
いや、確かに焔護の周囲がゆらゆらとまるで陽炎のように―――
景色が揺れている。ちりちりと首の後ろ…うなじのあたりが痛い。
―――地面に転がっている小石が小さな音を立てて弾けた。

【焔護】俺のものを取ろうとはいい度胸だな。粉々にしてやる。
【柄の悪い巨漢】うるせええええええ!!!!
          このチビがぁあああ!!粋がってんじゃねええっ!!!

2M近くある巨漢の一人が焔護に襲い掛かる。
一瞬、焔護が酷く歪んだ笑い顔を見せた。
―――酷薄に唇が歪む。

【焔護】そうか、俺はチビか。

豪腕から繰り出されるラリアートを右掌で軽く止め、
そして、襲い掛かってきた巨漢の首を左手で鷲掴みにする。

【柄の悪い巨漢】うげええっ!?

呻きとも、悲鳴とも取れる声が巨漢から漏れた。そしてゆっくりと巨漢の足が地面から離れていく。
焔護が左手だけで巨漢を持ち上げたのだ。
巨漢の両手は焔護の細い腕を掴み、首から引きはがそうとしている。
そして、ばたばたと丸太のような両足をバタつかせる巨漢。

【焔護】でかいのは態度だけだな。
【柄の悪い巨漢】―――ひ、ぁ!

ごきん!!
と鈍い音がして、持ち上げられた巨漢の四肢から力が抜ける。

【水姫】――――ッ!!!!
【焔護】この程度か。

だらりと体の力が抜けた巨漢を持ち上げたまま―――残りの巨漢たちの方を
振り向く焔護。その表情はとっても歪んでいる。
どっちかって言うと焔護のほうが確実に悪役のようだ。

【残った5人の巨漢たち】きっさまアアアアアアアッ!!!!よくもォォオオオ!!

激昂した残りの巨漢たちが一斉に襲い掛かってきた。
襲い掛かってきた一人に、掴んでいた巨漢をぽいっ、と投げつける。

【巨漢1】ぐおおっ!!

そしてそのまま―――水姫を一瞥する。

【焔護】水姫、後ろ向いてろ。
【水姫】あうぅ…

水姫が後ろを向くのと同時に、巨漢たちの四肢が断裂した。
焔護の手にはいつの間にか神刀・天照が握られている。

【焔護】馬鹿共が。

肉塊・血飛沫・臓物が飛び―――それらが霧散していく。

【焔護】(やはり…中身は精巧にできている、か。)
【巨漢】ひ、ひいいいいいいっ!!!あにっっ、アニキーーーっ!!!
     たすっ、助けてアニキィィィィ!!

辛うじて生き残った一人の巨漢が一目散に逃げていった。

【焔護】・・・。

恐怖に顔を引きつらせた水姫が焔護の腕にしがみ付く。

【水姫】た、確かに酷い人達だったけどなにも殺さなくても…!!
【焔護】馬鹿者。お前が危ない目にあわそうとした奴等に手加減などできるか。
    それに――気付いてなかったか。…まぁ、無理もないが。
    言っておくが、俺が斬った奴等は人間ではないぞ。
【水姫】えっ、どういう…。
【焔護】後で分かるさ。―――おい、露天商。
【露天商】は、はいっ、あ、た、助けていただいてありがとうございましたっ!!
     なんとお礼を言ってよいか…
【焔護】そんなことはどうでもいい。早くここから離れた方がいい。
     あの様子だと「アニキ」とかをつれてくるぞ。
【露天商】へひっ、は、はわわわあーーー

漫画のような声を上げながら荷物をまとめて一目散に退散する露天商。
数々あった露天は全てが片付けられ、広場は閑散としていた。
さすがゴロツキどもが暴れただけある。人っ子一人居なくなった。


――数分後、逃げた巨漢が数人の更なる巨漢を連れてやってきた。
巨漢まみれだ。

【巨漢】アニキっ!こいつですぜ!!!
【兄貴と呼ばれた男】ふんっ、逃げずに居るとはたいした度胸だな!!

体に似合う大声で叫ぶ。
焔護は腰掛けていた樽からゆっくりと立ち上がり―――巨漢たちを一瞥した。

【焔護】待っていたぞ。面倒ごとは早く済ますに限るからな。
【巨漢】てっ、てめえ…!!!ぶっころしてやるうう!!

激昂して殴りかかる巨漢をかわして転ばせる。

【巨漢】ぐぺっ!

その上から顔を踏みつけ踏みつけ、踏みつけ踏みつけ踏みつけ踏みつけ踏みつけ
踏みつけ踏みつけ踏みつけ踏みつけ、そして蹴り飛ばす。
その表情はとっても無表情だ。

【別の巨漢】…アニキ、こいつ…!!
【アニキ】あァ、分かってるぜ。
      一人で俺たちを相手しようとするとはたいした度胸じゃねェか。

ひょいっと、少し離れたところから物陰から水姫が姿を現した。
焔護が隠れているようにと言ったのだが―――、何を思ったのか、飛び出てきた。

【水姫】ひとりじゃないぞっ!ボクだっているんだから!!

びし!と指を刺す。

【焔護】――――こら!!水姫、出てくるなっ!

焔護が叫ぶのと同時にアニキが叫ぶ。

【アニキ】そうか、ならてめェからぶっ殺してやるぜ!!行け、お前たちっ!!

―――隠れていた数人の巨漢たちが水姫に襲い掛かった。
わらわらわらーと一斉に飛び掛る。

【水姫】きゃああああっ!!!

…完全に足手まといな水姫。

【焔護】み―――